賀川豊彦学会

第32回(2019年度)大会が行われました

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去る9月6日(金)に第32 回賀川豊彦学会大会・総会が無事開催、終了いたました。今回は下記7件の研究発表と講演があり、大変充実した大会となりました。

1.岩田三枝子氏(東京基督教大学)「横浜指路教会教会誌『指路』にみる村岡平吉とその家族―賀川ハルを巡る人々」では、教会誌『指路』の行間から、村岡平吉とその家族にとっての教会の意義と、教会にとっての平吉一家の意義を読み解き、賀川ハルの信仰のルーツをたどる試みがなされました。

2.広崎仁一氏(日本サーバントリーダーシップ協会)「賀川豊彦に見るサーバントリーダーシップ」では、優れたサーバント・リーダーとして、また SDGsの先駆者として、現代的な視点から賀川豊彦の生き方を改めて位置づけるという試みが探られました。

3.李善惠氏(関西学院大学)「昭和戦前期における神戸『イエス団』の活動からみる社会事業の実践に関する一考察」では、昭和戦前期におけるイエス団の社会事業実践が、最初期の活動からどのように変遷してきたかが実証的に追跡されました。

4.田中祐介氏(明治学院大学)「『社会小説』としての賀川豊彦『死線を越えて』の同時代的位相を読み解くー大正中期の『社会の発見』後に読者たちが期待したものー」では、雑誌掲載当時から「社会小説」と銘打たれた『死線を越えて』が、同時代の各層にどのように受け止められたかについて報告されました。

5.波勢邦生氏(京都大学)「大正生命主義と賀川豊彦」では、「大正生命主義」とは何か、そして、大正生命主義と賀川豊彦との関わりはどのようなものであったかを問い、「生命の自然神学者」としての賀川豊彦の思想について議論されました。

6.金秀娟氏(同志社大学大学院)「賀川豊彦による神の国運動の神学的基盤―聖霊論を中心に——」では、賀川豊彦の「神の国運動」と内村鑑三の「再臨運動」の比較を通して、両者の性格的・思想的な相違が、各々の聖霊理解の相違からくるものであることが論じられました。

7.庾凌峰氏(兵庫教育大学大学院)「賀川豊彦と香港―賀川は香港の新聞や雑誌にどのように報じられたか」では、賀川豊彦と香港との関係に焦点をあてて、賀川の香港での活動と発言が、香港の新聞、雑誌においてどのように報じられたかについて、新しい資料を発掘しつつ考察されました。

午後のプログラムでは、篠崎美生子氏(明治学院大学教授・日本文学)の「賀川豊彦『死線を越えて』の位置」と題した基調講演が、キリスト教研究所との共催で行われました。講演では、『死線を越えて』の、他の近代小説とは異なる外面描写を多用した文体の特色や、登場人物をめぐる「内的視点のズレ」といった現代文学の分析手法を通して、今日における『死線を越えて』の小説としての意義と再評価の試みが語られました。先生の魅力的な話術に聴者一同思わず引き込まれるご講演でした。講演会後、大学のパレットゾーンにて懇親会が行われ、美味しいお食事をいただきながら、参加者の皆様から近況報告を伺うなど、交流の時が持たれました。

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第32回(2019年度)大会が行われました